オリジナルの、ノンアルコール飲料を作りました。
その名も「SAM’S BIKE」。
札幌の自転車屋が作った、自転車乗りのための飲み物。
その経緯をお伝えしようと思います。
作ろうと思った「きっかけ」は、いくつもあります。
なにより一番は
BIKE AND BEER
今は亡き松浦 修氏(サムさん)が古くから標榜していたフレーズ。
今の時勢では決して許されない事ですが、当時だって顔をしかめる人はいたでしょう。ダメっていわれるとやりたくなる。イリーガルな事をするカッコよさ、って昔はありました。そんなカッコいいサムさんへの敬意がきっかけです。
そんなふうに、身近な自転車仲間たちはビールが大好きな事、
そして15年前くらいからクラフトビールの認知度があがってきた事、
僕らの住む街でもいくつかブルワリーやビアバーが出来てきて、それを飲む機会が増えた事。
自転車で遊び終わって、仲間と乾杯!は最高に幸せなんです。
そして数年前に、以前から共謀することの多かった自転車仲間M氏と
「ウチラでオリジナルのクラフトビール作りたいね」
ていう流れになったのは必然で。
あそこのブルワリーにお願いして、味はこんな感じで、、、なんて想像を膨らませていました。
でも。
昨今の、飲酒運転に対する社会の意識の変化。
自動車の飲酒運転による重大事故が後を絶たない。法律を変えるまでになっています。
自転車のそれも同じで、厳罰化が進んだ。帰りは押して帰るから大丈夫、はもう通用しない。
僕等もずいぶん歳をとって、やっと常識的に物事を考えられるようになりました。
ダメなことはダメだ。イリーガルな事はカッコ悪い。
なら合法的にカッコいい事をしよう。
「オリジナルの、ノンアルコールビールを作ろう」
と。
僕のオルタナティヴ感とM氏のD.I.Y.精神が合致した瞬間でした。
よく云われる「Z世代のアルコール離れ」と、世界的な「ソバキュリアス」ムーブメント、そしてあのパンデミック。街に飲みに行かなくなって、家飲みする人が増えた。
ノンアルコールビールはずいぶん種類が増えて、僕もホントにいろいろ飲みましたがどれも横並びで個性がない印象。その中で突出して美味しかったのが
云われなかったらビールと間違う味。気に入りすぎてウチの店でも売るようになったくらいで。
こんな風に出来たら良いなと、早速あそこのブルワリーのY君に相談したところ、いろいろ条件が合わず断念。でもココに相談してみたらと紹介されたのが
東京都江東区のクラフト清涼飲料会社。千葉でクラフトジンを作るMITOSAYA蒸留所の清涼飲料部門です。M氏がMITOSAYAの代表の方と親交があったのでハナシも早く、早速ZOOM会議となったのが2024年12月。スタッフの佐伯さんと野崎さん曰く
「実はビールテイストのものはまだ作ったことがなくて、ぜひやってみたい」
と意気投合、契約成立となります。
ここで初めて知ったのですが、ノンアルコール飲料を作るには
大きく2通りの方法があるということ。
1.発酵させてからアルコールを抜く(市販のノンアルコールビールの大半がこれ)
2.まったく発酵させず、ブレンドしてテイストを出す(ノンアルコールビールでは稀)
カンパニーさんは、製造免許の点からも後者です。そしてビールという言葉も使えないとの事。
でもここで僕等はニヤリとします、
「誰もやってないなら、ウチラがやろう」
「先駆者になれる」
ということで、カンパニーさんの技術を駆使してブレンドのみによる
100%正真正銘のノンアルコール飲料
の開発がスタートしました。
ブレンドのレシピを決めるため試飲サンプルを作るのですが、地理的な制約から
送ってもらって試飲して、改善点伝えてまた送ってもらって、を繰り返す事にしました。
僕等の要望は
「自転車に乗って渇いた身体を潤す」
「自転車で運ぶので常温でも美味しい」
「ビールの苦みが欲しい」
でした。野崎さんは、北海道でブルワーの経験もある方なので、たぶん伝わるだろうと。
そして待望の1回目の試飲サンプルが送られてきた12月末。
一口目の印象は
「爽やか!だけどなんか足りない、、、」
ということで再びZOOM会議。
良いところ、足りないところの要望を伝えると、さすが野崎さん、
「云われると思ってましたw」
と想定内だったようで。2回目の試飲サンプルに期待が膨らみます。
奇しくも年明け1月末、東京に自転車の展示会で訪れる予定だったので
そこで奈美さんと二人でカンパニーさんの工場を訪問することに。
クリーンなハイテク町工場、ていうのがしっくりくる佇まい。
初顔合わせ&2回目の試飲。奈美さんの感想、
「スッキリ飲みやすくなった」
ちなみに奈美さんは、そもそもビールが苦手です。
ビール好きの僕は
「少し上品すぎやしないか」
まだまだ満足いく感じではない。
ただ、工場の雰囲気や作業している方のハナシも聞けて
「この人たちと組めて良かった」
と思ったのでした。
更なる要望を伝えて、3回目の試飲サンプルが送られてきたのが2月中旬。
「うーん、なんも変わってないな」
5月の連休にリリースを考えていたので、ちょっと焦りの色が。
たぶん彼等が持つ、自転車に乗った後の爽やかな飲み物のイメージ、
スポーツドリンク感に固執されてるのだと思い、
ちょっと大胆な例えも踏まえてガツンとメールで思いを伝えました。
「これで伝わらないのであれば、妥協するしかないか」
気が付けばもう4月。店は忙しくなってきて、ノンアルコール飲料の事ばかり
考えていられなくなってきた頃、4回目の試飲サンプルが。
この時はM氏と、ラベルのデザインをお願いしたS氏夫妻を呼ぶ。S氏は以前
サイクルボトルのデザインもお願いしたことがある自転車仲間。
「キた!!!コレさ、コレなのさ!」
「最後にちゃんと合わせてくる野崎さんスゴイ」
僕とM氏は一際声が大きくなるのでした。 S氏も納得。
そして気になる奈美さんとS氏夫人(彼女もビール苦手)の感想、
「苦ーい」
「飲みにくーい」
大成功、完成です。まずは一安心。そしていよいよラベル。
S氏がいくつか案を持ってきていて、洗練された感じ、キャッチーでベタな感じ、すごく手の込んだ感じ、
いろいろみんなで検討しましたが
「やっぱりサムズといえばコレだよな」
という王道デザインで決定。商品名も〇〇ドリンクとかひねった名前とか
カッコつけないでモロ、店名で。
こうして日本初の、自転車屋が作ったノンアルコール飲料が完成しました。
長くなりましたが、こんな経緯です。
ここからは、僕の想い、理想なんですが、
もしこの飲み物が注目されて他の自転車屋でもノンアルコール飲料作りたいってなったとき、このレシピまんまでラベルだけオリジナルで作って売ってもらったらいいと思ってます。独占する気はないというか。それぞれの地方でこの味が定着するのも面白いかなと。まあこの味が気に入らなければもっと美味しいもの作ってもらった方が良いですけどね。どんどん多彩に進化していった方が。
そしていずれ、ノンアルコール飲料がもっとポピュラーになって種類も増えてビアバー、ビアパブ、ナイトクラブやベニューに普通に並んでて、僕等自転車乗りが自転車で乗り付けて、店でカンパーイってやって、ワイワイ談笑したり、音楽聴いてカラダ揺らしたり暴れたり、じゃあ帰るわーって自転車に乗って帰る。カッコ良くないですか?サムさん。
スタッフ サライ